「ディフェンシブ株といえばNTT」。
そう考える投資家は多いが、もう一つ忘れてはいけないのがソフトバンクである。
ソフトバンク株式会社(9434)は、携帯電話事業を中核としながら、Yahoo! JAPAN、LINE、PayPay、法人向けITサービス、金融サービスなどを幅広く展開している企業である。
通信という生活に欠かせないインフラを持っているため、景気が悪化したからといって携帯電話の利用が突然なくなるわけではない。その意味では、ソフトバンクは典型的なディフェンシブ株の一つといえる。
一方で、現在のソフトバンクは「単なる通信会社」ではない。PayPayやLINEヤフー、法人向けクラウド・AI、金融サービスなどを成長エンジンとして取り込みながら、通信会社から総合的なデジタル企業へと変化している。
では、現在の株価246.9円という水準でソフトバンク株を買う価値はあるのだろうか。
結論からいえば、**「大きな値上がりを狙う株」ではないものの、配当を受け取りながら長期保有するディフェンシブ株としては魅力がある。ただし、現在の株価は決して割安とはいえず、積極的に買うなら株価調整局面を待ちたい銘柄である」**というのが筆者の評価である。
ソフトバンクの業績は着実に拡大している
まず注目したいのが業績である。
ソフトバンクの売上高は、2024年3月期の6兆840億円から、2025年3月期には6兆5,443億円、2026年3月期には7兆387億円まで拡大した。
営業利益も2024年3月期の8,761億円から、2025年3月期には9,890億円、2026年3月期には1兆426億円まで増加している。
親会社の所有者に帰属する純利益も、2024年3月期の4,891億円から2025年3月期には5,261億円、2026年3月期には5,508億円となった。
つまり、売上高・営業利益・純利益のいずれを見ても、基本的には右肩上がりである。(ソフトバンク)
ソフトバンクの業績推移
| 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 2027年3月期予想 | |
| 売上高 | 6兆840億円 | 6兆5,443億円 | 7兆387億円 | 7兆5,000億円 |
| 営業利益 | 8,761億円 | 9,890億円 | 1兆426億円 | 1兆1,000億円 |
| 親会社帰属純利益 | 4,891億円 | 5,261億円 | 5,508億円 | 5,600億円 |
2027年3月期について会社は、売上高7兆5,000億円、営業利益1兆1,000億円、親会社の所有者に帰属する純利益5,600億円を予想している。
売上高は前年比7%増、営業利益は6%増、純利益は2%増となる見通しである。(ソフトバンク)
ここで重要なのは、ソフトバンクが「通信料金だけで成長している会社」ではないという点である。
ソフトバンクの強みは「通信×金融×IT」の経済圏
ソフトバンクの最大の強みは、通信事業を入口として巨大な顧客基盤を持っていることである。
携帯電話サービスの利用者は約4,100万人、Yahoo! JAPANは約8,300万人、PayPayは約7,300万人、LINEは約1億人という巨大なユーザー基盤を抱えている。(ソフトバンク)
この顧客基盤を利用して、
「携帯電話」
↓
「PayPay」
↓
「クレジットカード・金融」
↓
「Yahoo! JAPAN・LINE」
↓
「ショッピング・広告」
↓
「法人向けクラウド・AI」
という形で、一人の顧客から複数の収益を生み出すことができる。
これは単純な通信会社にはないソフトバンクの強みである。
特に今後注目したいのが法人向けのAI・クラウド事業である。
2026年3月期のエンタープライズ事業の営業利益は1,924億円だったが、2027年3月期には2,300億円を目指している。さらに会社はクラウド・AI関連売上を2026年3月期から2031年3月期にかけて倍増させる方針を掲げている。(ソフトバンク)
2027年3月期第1四半期でも、エンタープライズ事業は前年同期比11%増収、28%増益となっており、クラウド・AI領域についても2025年度から2027年度まで年平均30%の成長を見込んでいる。(ソフトバンク)
つまり、ソフトバンクは「高配当の通信株」であると同時に、「AI・デジタル成長株」という側面も持っているのである。
最大の魅力はやはり配当
ソフトバンク株を語るうえで欠かせないのが配当である。
2024年3月期から2026年3月期まで、普通株式の年間配当は8.6円を維持している。
そして2027年3月期については、年間8.8円への増配を予想している。(ソフトバンク)
現在の株価246.9円に対して8.8円の配当を受け取るとすると、予想配当利回りは約3.56%となる。(Yahoo!ファイナンス)
銀行預金と比較すればもちろん高い利回りであり、株価の値上がりだけではなく「配当を受け取りながら長期保有する」という投資との相性が良い。
さらにソフトバンクは、2027年3月期から2031年3月期にかけて、利益成長に合わせて継続的な増配を目指している。
この点は長期投資家にとって非常に重要である。
現在の配当利回りだけを見るのではなく、将来的に1株当たり配当がどこまで増えていくかを見る必要があるからである。(ソフトバンク)
では株価は割安なのか?
ここがソフトバンク株の最大のポイントである。
2026年9月11日の終値は246.9円である。
この時点で予想PERは約21.1倍、PBRは約4.1倍、予想配当利回りは約3.56%となっている。(Yahoo!ファイナンス)
PERだけを見ると、決して割安とはいえない。
仮に2027年3月期予想EPSを11.71円とすると、
PER18倍 → 約211円
PER20倍 → 約234円
PER21倍 → 約246円
PER22倍 → 約258円
となる。
つまり現在の246.9円という株価は、2027年3月期の利益に対して約21倍という評価を市場から受けていることになる。
これは「業績が悪いから割安に放置されている株」ではない。
むしろ、安定した通信収益、PayPayやLINEの成長、AI・クラウド事業への期待、そして安定した配当を織り込んだ株価であると考えたほうがよい。
そのため、現在の株価から大きな上昇余地を期待するには、今後さらに利益成長率を高める必要がある。
株価の魅力は「大幅上昇」より「下値の安定性」
ソフトバンク株の魅力は、AI関連株のように短期間で株価が2倍、3倍になることではない。
むしろ、
「業績が大きく崩れにくい」
「配当が期待できる」
「通信という安定収益源がある」
「PayPayやAIなどの成長余地がある」
という複数の要素を組み合わせて、長期的に資産を増やしていくところにある。
景気が悪化した場合でも、企業や個人が携帯電話を突然解約するとは考えにくい。
この安定性こそが、ソフトバンクをディフェンシブ株として評価できる最大の理由である。
ただし、株価が絶対に下がらないという意味ではない。
むしろ現在のPER約21倍という水準を考えると、金利上昇や市場全体の調整が起きた場合には、利益が伸びていても株価が下落する可能性がある。
ソフトバンクの最大のリスクは「成長投資」
ここからはソフトバンク株のリスクを見ていきたい。
最大のリスクの一つは、AIやデータセンターなどへの大型投資である。
ソフトバンクは2031年3月期までの中期経営計画で、AI関連を中心とした戦略的投資枠として1兆円を確保している。
これは将来の成長につながる可能性がある一方、投資した資金が期待通りの利益を生まなければ、資本効率が悪化する可能性もある。(ソフトバンク)
特にAI関連事業は成長市場である一方、競争も非常に激しい。
データセンター、AIインフラ、クラウドなどへの投資が膨らめば、短期的には減価償却費や金融負担が増える可能性もある。
したがって、今後は「AIにいくら投資したか」だけではなく、「その投資からどれだけ利益を生み出せるようになったか」を確認する必要がある。
通信事業にもリスクはある
ソフトバンクの本業である通信事業も、完全に安全というわけではない。
NTT、KDDI、楽天などとの競争が続いており、料金値下げ競争が激しくなれば利益率が低下する可能性がある。
また、日本では人口減少が進んでいるため、携帯電話契約数を長期的に大きく増やすことは簡単ではない。
そのためソフトバンク自身も、単純な契約者数の増加ではなく、ARPU、金融サービス、法人向けサービス、AIなどによって1顧客当たりの収益を高める戦略を重視している。
2027年3月期第1四半期ではモバイルARPUが前年同期比60円増加し、料金改定の影響から第2四半期以降は前年同期比で200円前後増加する見込みと説明している。(ソフトバンク)
これは通信事業の収益性を支える重要なポイントである。
PayPay・金融事業も成長ドライバー
ソフトバンクを評価するうえで、PayPayを中心とした金融事業も見逃せない。
2026年3月期のファイナンス事業は、PayPayやPayPayカードの決済取扱高の増加などを背景に大きく成長した。
2027年3月期について会社はファイナンス事業の営業利益を1,100億円と予想しており、前年の863億円から27%の増益を見込んでいる。(ソフトバンク)
2027年3月期第1四半期でもファイナンス事業は27%増収、76%増益と非常に強い成長を見せている。(ソフトバンク)
通信事業が安定収益を生み、PayPayなどの金融事業が成長する。
この組み合わせは、ソフトバンクの中長期的な企業価値を考えるうえで非常に重要である。
ソフトバンクは「NTTより成長性、NTTより少し高いリスク」
ディフェンシブ株としてソフトバンクを見る場合、NTTとの比較は避けられない。
NTTは国内通信インフラの圧倒的な安定性が魅力である。
一方、ソフトバンクは通信に加えてPayPay、LINEヤフー、AI、クラウド、金融などの成長事業を持つ。
したがって、
安定性重視ならNTT
安定性+成長性ならソフトバンク
という考え方ができる。
その代わり、ソフトバンクのほうがAIや金融などへの投資リスクを抱えている。
つまり、ソフトバンクは「完全なディフェンシブ株」というより、ディフェンシブ性を持った成長株と考えるのが最も分かりやすい。
ソフトバンク株の評価
ここまでをまとめると、ソフトバンクの評価は次のようになる。
| 項目 | 評価 | コメント |
| 業績安定性 | ★★★★★ | 通信を中心に安定した収益 |
| 成長性 | ★★★★☆ | PayPay・AI・クラウドに期待 |
| 配当 | ★★★★☆ | 利回り約3.6%で魅力的 |
| 財務・投資余力 | ★★★★☆ | 高水準のキャッシュ創出 |
| 株価の割安感 | ★★☆☆☆ | PER約21倍で割安とはいえない |
| ディフェンシブ性 | ★★★★☆ | 通信が収益基盤 |
| 長期保有適性 | ★★★★☆ | 配当+緩やかな利益成長に期待 |
総合的には**「★★★★☆(4.0/5)」**と評価したい。
特に魅力的なのは、通信という安定したキャッシュフローを持ちながら、PayPay、金融、法人IT、AIなどの成長余地を持っていることである。
一方で、現在の株価はその魅力をある程度織り込んでいる。
したがって、「今すぐ買わないと大きく出遅れる」という銘柄ではない。
では、いくらなら買いたいのか?
筆者がソフトバンク株を長期保有目的で購入するのであれば、現在の246.9円よりも少し低い水準を狙いたい。
例えば、
230円前後:かなり検討しやすい
220円前後:積極的に買いたい水準
210円前後:長期投資として非常に魅力的
というイメージである。
もちろん株価は将来の業績や金利、市場環境によって変化するため、この価格が絶対的な適正株価というわけではない。
ただし、2027年3月期予想EPS11.71円を基準に考えると、230円ならPER約19.6倍、220円なら約18.8倍、210円なら約17.9倍となる。
現在の約21倍と比較すれば、株価が下落したときほど投資妙味が高まることが分かる。
まとめ――ソフトバンクは「配当をもらいながら成長を待つ株」
ソフトバンクは、単純な高配当株ではない。
通信という安定した収益基盤を持ちながら、PayPay、金融、法人向けIT、クラウド、AIなどに事業領域を広げている。
2026年3月期には売上高7兆387億円、営業利益1兆426億円、親会社帰属純利益5,508億円と過去最高水準の業績を達成した。
さらに2027年3月期も売上高7兆5,000億円、営業利益1兆1,000億円、純利益5,600億円を目指している。(ソフトバンク)
配当も年間8.6円から8.8円への増配が予想されており、現在の株価246.9円では約3.56%の配当利回りとなる。(Yahoo!ファイナンス)
このため、ソフトバンクは「株価が何倍にもなることを期待する銘柄」というより、安定した配当を受け取りながら、AI・金融・デジタル事業の成長をじっくり待つ銘柄と考えるのが適している。
一方で、PER約21倍という現在の株価は決して割安ではない。
したがって、筆者なら現在の246円前後で一気に買うのではなく、230円以下を一つの買い場として意識し、220円前後まで下がれば積極的に検討する。
ソフトバンクの最大の魅力は「守り」だけではない。
通信という強固な土台の上に、PayPay、金融、AI、クラウドという「攻め」の事業を積み上げている点にある。
「高配当×ディフェンシブ×成長性」。
この3つを同時に狙える点こそ、ソフトバンク株の最大の魅力なのである。

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