「通信株ならNTTかKDDIか、それともソフトバンクか」。
長期投資を考えるうえで、一度は比較したい3社である。
その中でもKDDIは、非常にバランスの取れた銘柄である。
携帯電話の「au」を中心とした通信事業を持ちながら、UQ mobile、povo、金融、エネルギー、DX、データセンター、ローソンなどへ事業を広げている。
しかも、通信事業から生まれる安定したキャッシュフローを背景に、長期的な増配と自社株買いによる株主還元にも積極的である。
2026年3月期の連結売上高は6兆719億円、営業利益は1兆991億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は7,071億円となった。売上高は前年比4.1%増、営業利益は1.1%増、純利益は7.9%増である。(KDDI ニュースルーム)
さらに2027年3月期は、売上高6兆4,100億円、調整後営業利益1兆2,100億円を目指している。
では、株価3,031円という現在の水準でKDDI株を購入する価値はあるのだろうか。
結論からいえば、KDDIは「大きな値上がりを狙う株」ではなく、安定した業績・増配・株主還元を受け取りながら長期保有するディフェンシブ株として非常に魅力的な銘柄である。現在の株価も極端に割高ではないが、より高い投資妙味を狙うなら2,700~2,800円台までの調整局面を待ちたい銘柄である。
KDDIの業績は安定して成長している
まずKDDIの業績を見ていきたい。
KDDIの2024年3月期の売上高は5兆7,540億円、2025年3月期は5兆9,180億円、2026年3月期は6兆719億円まで増加した。
売上高は派手に急成長しているわけではない。
しかし、これはKDDIの魅力を考えるうえでむしろ重要なポイントである。
通信会社に求められるのは、毎年30%、50%といった急激な成長ではない。
「景気が悪くても安定して稼ぎ続けること」である。
KDDIはまさにその条件を満たしている。
2025年3月期には営業利益が1兆1,187億円まで増加し、2026年3月期も1兆991億円と1兆円を超える水準を維持している。
2027年3月期には調整後営業利益1兆2,100億円を目指している。
つまりKDDIは、売上高6兆円、営業利益1兆円という非常に大きな利益規模を安定して維持できる企業へと成長しているのである。(KDDI ニュースルーム)
KDDIの本当の強みは「通信以外」にある
KDDIと聞くと、多くの人が「auの携帯電話会社」というイメージを持つだろう。
もちろん通信事業はKDDIの最大の収益基盤である。
しかし、現在のKDDIはそれだけの会社ではない。
金融、エネルギー、DX、データセンター、IoT、AIなど、通信インフラを起点としてさまざまな事業へ進出している。
さらに2024年にはコンビニ大手のローソンを連結子会社化し、リアル店舗を含めた新たな経済圏の構築を進めている。
これはKDDIを評価するうえで非常に重要なポイントである。
携帯電話だけに依存している会社であれば、人口減少によって契約者数が減少することが長期的なリスクになる。
しかし、
通信
↓
金融
↓
エネルギー
↓
ローソン
↓
DX・AI
↓
データセンター
と事業領域を広げれば、一人の顧客から得られる収益を増やすことができる。
KDDI自身も、2027年3月期から2029年3月期の中期経営戦略において、通信を「テレコムコア」と位置づけ、そこから生まれる投資原資をパーソナルグロースやビジネスグロースへ振り向ける戦略を打ち出している。(KDDI)
通信事業の安定性はKDDI最大の武器
KDDI最大の強みは、やはり通信事業である。
au、UQ mobile、povoという複数ブランドを展開し、顧客の価格帯やニーズに合わせてサービスを提供している。
KDDIは今後、単純な契約者数の拡大よりも、
「モバイルARPUを上げる」
「解約率を下げる」
「顧客生涯価値を高める」
という戦略を重視している。(KDDI)
これは非常に合理的な戦略である。
日本では人口減少が進んでいるため、携帯電話契約者数を永遠に増やし続けることは難しい。
だからこそ、一人の顧客から得られる収益を高めることが重要になる。
例えば、
auを利用する
↓
au PAYを利用する
↓
au PAYカードを利用する
↓
銀行・証券などの金融サービスを利用する
↓
電気・インターネットもKDDIにまとめる
という経済圏を作ることができれば、顧客のKDDIへの依存度が高まり、解約率低下にもつながる。
この「通信を入口に顧客との接点を増やす」という戦略は、KDDIの長期的な競争力を支える重要な要素である。
KDDIは「ローソン」というリアル店舗も持っている
ソフトバンクとの比較でKDDIが面白いのは、ローソンとの組み合わせである。
KDDIは三菱商事とともにローソンを共同経営する体制を構築している。
これによって、KDDIのデジタルサービスとローソンの全国の店舗網を組み合わせることができる。
スマートフォン、金融、ポイント、コンビニ、データなどを組み合わせれば、オンラインとリアル店舗の両方を使った新しい顧客体験を作ることが可能になる。
KDDIは中期経営戦略の中で、ローソンを含む「Pontaパス」などを活用し、通信以外の顧客接点を拡大する方針を示している。(KDDI)
これはNTTやソフトバンクとは異なるKDDI独自の強みになり得る。
配当はKDDI最大級の魅力
KDDI株を長期保有する最大の理由の一つが配当である。
KDDIは2026年3月期に年間80円を配当し、24期連続増配を達成した。
さらに2027年3月期は年間84円を予定しており、実現すれば25期連続増配となる。(KDDI)
これは非常に強い実績である。
株式投資では、1年間だけ高い配当を出す企業よりも、10年、20年と配当を増やしてきた企業のほうが長期投資との相性が良い。
2026年9月11日の株価3,031円に対して年間配当84円なら、配当利回りは約2.77%となる。(株探)
3%を下回っているため、一見すると「高配当株」と呼ぶには少し物足りない。
しかし、KDDIの場合は配当利回りだけを見るべきではない。
重要なのは、将来的に配当そのものが増えていく可能性である。
配当を再投資していけば、長期的には複利効果も期待できる。
そのためKDDIは、NISAなどを利用して長期間保有する投資家との相性が非常に良い銘柄である。
株価3,031円は割高なのか?
では、現在の株価をどう評価すべきだろうか。
2026年9月11日の終値は3,031円である。
予想PERは15.7倍、PBRは2.25倍、配当利回りは約2.77%となっている。(株探)
ソフトバンクの予想PERが約21倍だったことを考えると、KDDIの15倍台というPERは比較的落ち着いた水準である。
KDDIは、
「安定した通信収益」
「増配」
「金融・DX・AIなどの成長」
「ローソンとのシナジー」
といった材料を持ちながら、PER15倍台で評価されている。
この点は非常に魅力的である。
一方、KDDIは急成長企業ではない。
そのためPER25倍、30倍といった高い評価を市場から受ける可能性も限定的である。
つまりKDDI株は、
「割安だから一気に株価が上がる株」ではなく、「適正な価格で買って、利益と配当の成長を長期間享受する株」
と考えるべきである。
EPSから考えるKDDIの株価
株価を考えるうえではPERを使うと分かりやすい。
仮に今後のEPSを約190円と仮定すると、
PER14倍 → 約2,660円
PER15倍 → 約2,850円
PER16倍 → 約3,040円
PER17倍 → 約3,230円
PER18倍 → 約3,420円
という株価水準になる。
現在の3,031円は、PER16倍程度の評価に相当する。
したがって、現在の株価は「明らかに割高」というわけではない。
むしろ、KDDIの安定性と増配を考えれば妥当な水準と評価できる。
ただし、より安全域を確保して投資したいのであれば、2,800円前後まで下落したところで購入したほうが、PER面でも配当利回りの面でも魅力が高まる。
KDDIの最大のリスク①――通信料金競争
もちろん、KDDIにもリスクはある。
最大のリスクの一つが通信料金競争である。
NTT、ソフトバンク、楽天モバイルなどとの競争が激化すれば、料金値下げや販促費の増加によって利益率が低下する可能性がある。
特に楽天モバイルの契約者増加が続けば、KDDIを含む大手3社にとって競争環境は厳しくなる。
KDDIが今後も利益を伸ばすためには、単純な値上げではなく、通信品質や付加価値サービスによって顧客を維持しながらARPUを高める必要がある。
KDDIの最大のリスク②――ローソン・新規事業への投資
もう一つのリスクは、通信以外の事業への投資である。
KDDIはローソン、金融、DX、AI、データセンターなど、積極的に事業領域を広げている。
これは成功すれば大きな成長につながる。
しかし、新規事業には必ずリスクがある。
投資した資金に対して十分な利益が生まれなければ、ROICやROEなどの資本効率が悪化する可能性がある。
特にAIやデータセンターは今後の成長分野である一方、設備投資負担も大きい。
したがって今後のKDDIを見る際には、
「売上高が増えているか」
だけではなく、
「投資した資本からどれだけ利益を生み出しているか」
を見ることが重要になる。
KDDIの最大のリスク③――大規模な通信障害
通信会社特有のリスクとして、通信障害やサイバー攻撃も無視できない。
通信インフラは社会にとって重要な基盤であり、障害が発生した場合には企業イメージや顧客満足度に大きな影響を与える可能性がある。
また、AIやクラウド、金融などへ事業を広げるほど、サイバーセキュリティの重要性も高まる。
KDDI自身も中期経営戦略においてサイバーセキュリティを成長領域の一つとして位置づけている。(KDDI)
これは事業機会であると同時に、今後の重要なリスク管理項目でもある。
KDDIはNTT・ソフトバンクと比べてどうなのか?
ここまで分析すると、NTT、KDDI、ソフトバンクの違いが見えてくる。
ざっくり整理すると、
NTT=安定性重視
KDDI=安定性+成長性+株主還元
ソフトバンク=安定性+成長性をより強く狙う
というイメージである。
KDDIはこの3社の中でも特にバランスが良い。
通信という強固な収益基盤を持ちながら、金融、ローソン、DX、AI、データセンターなどへ成長領域を広げている。
さらに25期連続増配を予定している。
「配当を受け取りながら、企業そのものの成長も狙いたい」という投資家にとっては、非常に使いやすい銘柄である。
KDDI株の評価
ここまでをまとめると、KDDIの評価は次のようになる。
| 項目 | 評価 | コメント |
| 業績安定性 | ★★★★★ | 通信を中心に安定した利益 |
| 成長性 | ★★★★☆ | 金融・DX・AI・ローソンに期待 |
| 配当 | ★★★★★ | 25期連続増配を予定 |
| 株価の割安感 | ★★★★☆ | PER15倍台で極端な割高感はない |
| ディフェンシブ性 | ★★★★★ | 通信インフラが収益基盤 |
| 株主還元 | ★★★★★ | 増配+自己株式取得に積極的 |
| 長期保有適性 | ★★★★★ | 安定性と成長性のバランスが良い |
総合評価は**「★★★★☆~★★★★★」**である。
特に長期投資という観点では、かなり評価しやすい銘柄である。
では、KDDIはいくらなら買いたいのか?
現在の株価は3,031円である。
筆者なら、3,000円前後でも少額からの購入は検討できる。
しかし、より魅力的な水準を狙うのであれば、
2,900円前後:購入を検討
2,800円前後:かなり魅力的
2,700円前後:積極的に買いたい
というイメージである。
例えば年間配当84円を前提とすると、
株価3,000円 → 配当利回り2.80%
株価2,800円 → 配当利回り3.00%
株価2,700円 → 配当利回り3.11%
となる。
つまり、株価が下がれば下がるほど、KDDIの魅力である「増配+配当利回り」がさらに強くなる。
短期的な株価上昇を追いかけるのではなく、配当利回り3%前後を一つの目安として買い場を待つのも有効な戦略である。
まとめ――KDDIは「安心して長く持てる成長型ディフェンシブ株」
KDDIは、派手な成長株ではない。
しかし、それこそがKDDIの魅力である。
通信という非常に安定した収益基盤を持ち、そこから生み出されるキャッシュを金融、DX、AI、データセンター、ローソンなどの成長分野へ投資している。
2026年3月期には売上高6兆719億円、営業利益1兆991億円、親会社帰属利益7,071億円を達成した。
2027年3月期には売上高6兆4,100億円、調整後営業利益1兆2,100億円を目指している。(KDDI ニュースルーム)
さらに年間配当は80円から84円へ増配予定であり、実現すれば25期連続増配となる。(KDDI)
現在の株価3,031円では配当利回りは約2.77%、PERは15.7倍である。(株探)
この数字を見る限り、KDDIは「激安株」ではない。
しかし、安定した通信収益、長期増配、金融・DX・AIなどの成長余地を考えれば、現在の株価は十分に検討できる水準である。
筆者なら、3,000円前後では少しずつ買い始め、2,800円前後まで下落した場合には購入ペースを上げたい。
そして2,700円前後まで下落する場面があれば、長期投資としてかなり魅力的な水準と判断する。
KDDIは「10倍株」を狙う銘柄ではない。
しかし、
「大きく負けにくい」
「配当が増えていく」
「企業利益も緩やかに成長する」
という3つを兼ね備えている。
長期投資で重要なのは、必ずしも一発の大きな利益ではない。
安定した利益を生み出す企業を、適正な価格で買い、配当を受け取りながら長く保有することも立派な投資戦略である。
そう考えると、KDDIは日本株の中でも非常に「持ち続けやすい」銘柄の一つである。
「通信株を1銘柄選ぶなら、安定性と成長性のバランスでKDDIを選ぶ」
という考え方は、十分に合理的なのである。

コメント