「通信株を買うならNTTとKDDI、ソフトバンクのどれがいいのか?」
これは通信株への投資を考えると、一度は悩むところである。
3社とも携帯電話や通信インフラという景気に左右されにくい事業を持ち、安定したキャッシュフローと株主還元が期待できる。そのため、一般的には「ディフェンシブ株」として扱われることが多い。
しかし、3社を詳しく見ていくと、その投資スタイルはかなり違う。
NTTは圧倒的な規模と安定性を持つ「王道ディフェンシブ株」、KDDIは通信を土台に金融・エネルギー・DXなどへ事業を広げる「バランス型」、そしてソフトバンクはPayPayやAI・データセンターなどへの成長投資を進める「成長型ディフェンシブ株」といえる。
では、2026年9月時点で最も投資妙味があるのはどの会社なのだろうか。
今回は、業績、株価、配当、成長性、リスク、バリュエーションを比較し、「安定性」「成長性」「配当」「割安感」の4つの観点から、3社を評価してみたい。
まずは3社をざっくり比較
2026年9月11日の終値は、NTTが175.7円、KDDIが3,031円、ソフトバンクが246.9円である。NTTの予想PERは約14.6倍、KDDIは約15.7倍、ソフトバンクは約21倍であり、単純なPERだけを見るとNTTが最も割安に見える。(Yahoo!ファイナンス)
| 項目 | NTT | KDDI | ソフトバンク |
| 証券コード | 9432 | 9433 | 9434 |
| 9/11株価 | 175.7円 | 3,031円 | 246.9円 |
| 予想PER | 約14.6倍 | 約15.7倍 | 約21倍 |
| 予想配当 | 5.4円 | 84円 | 8.8円 |
| 配当利回り目安 | 約3.1% | 約2.8% | 約3.6% |
| 安定性 | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★☆ |
| 成長性 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| 配当魅力 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| 割安感 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
| 総合評価 | ★★★★☆ | ★★★★★ | ★★★★☆ |
※株価・指標は2026年9月11日時点。配当利回りは概算。実際の投資判断では最新株価・業績予想を確認する必要がある。
この表だけを見ると、NTTは「安定性と割安感」、KDDIは「総合力」、ソフトバンクは「成長性と配当」が強みであることが分かる。
① NTT――「とにかく安定」を重視するなら最有力
まずはNTTである。
NTT最大の魅力は、何といっても通信インフラとしての圧倒的な規模である。
NTTドコモ、NTT東日本、NTT西日本、NTTデータなどを傘下に持ち、個人向け通信だけではなく、法人向けITサービスやデータセンターなど幅広い事業を展開している。
つまり、単純な「携帯電話会社」ではない。
特にNTTデータを中心としたIT・データセンター事業や、次世代通信技術「IOWN」など、中長期的な成長余地も持っている。
一方で、現在のNTTは「急成長企業」というよりも、安定したキャッシュフローを生みながら徐々に成長していく企業と考えた方がよい。
2026年3月期の連結最終利益は約1兆370億円となり、2027年3月期は9,800億円を見込む会社計画である。つまり、短期的には減益予想である点には注意したい。(株探)
一方、2026年9月11日の株価は175.7円、予想PERは約14.6倍、予想配当利回りは約3.1%である。(Yahoo!ファイナンス)
この水準は3社の中でも比較的割安感がある。
NTTの最大の魅力は「安心して持ち続けやすい」こと
NTTは短期間で株価が2倍、3倍になるような銘柄ではない。
しかし、通信インフラという極めて安定した収益基盤を持ち、配当を受け取りながら長期保有するという投資スタイルとは非常に相性が良い。
特に「株価の値上がりよりも、配当を受け取りながら長期間保有したい」という投資家には魅力的である。
現在の株価水準なら、3社の中では最も「割安なディフェンシブ株」と評価できる。
② KDDI――3社の中で最も「バランスが良い」
次にKDDIである。
個人的に3社を比較するなら、最もバランスが良いのがKDDIだと考える。
KDDIの強みは、au・UQ mobile・povoなどの通信事業を基盤にしながら、金融、エネルギー、DX、法人向けサービス、ローソンなどへ事業を広げていることである。
通信だけに依存していない点が大きなポイントである。
2026年3月期の売上高は約6兆719億円、営業利益は約1兆991億円、親会社帰属利益は約7,071億円となった。
さらに2027年3月期は、売上高6兆4,100億円、事業成長利益ベースの営業利益1兆2,100億円を目指している。(KDDI)
そしてKDDIの魅力として外せないのが株主還元である。
2026年3月期の年間配当は80円で、24期連続増配を達成。2027年3月期は84円を予定しており、実現すれば25期連続増配となる。(KDDI)
これはかなり強い。
通信事業の安定性に加えて、金融・エネルギー・DX・ローソンなどの成長分野を持ち、さらに連続増配を続けている。
まさに「ディフェンシブ株と成長株の中間」に位置する銘柄である。
KDDIの弱点は「安さ」
一方で、KDDIには明確な弱点もある。
それはNTTと比較すると、株価が割安とは言いにくいことである。
2026年9月11日の株価は3,031円、PERは約15.7倍、PBRは約2.2倍である。(Yahoo!ファイナンス)
決して割高すぎるわけではないが、「誰が見ても激安」という水準ではない。
したがって、KDDIは「安く買って大きな値上がりを狙う株」というよりも、適正価格で購入して、配当と業績成長を長期的に享受する銘柄と考えた方がよい。
③ ソフトバンク――3社の中で最も「成長」に期待できる
そして3社目がソフトバンクである。
ここでいうソフトバンクは、ソフトバンクグループではなく、証券コード9434のソフトバンク株式会社である。
ソフトバンクの最大の特徴は、通信会社から「総合デジタル企業」へ変わろうとしていることである。
もちろん、ソフトバンクの中心にあるのは携帯電話事業である。
しかし現在は、それだけではない。
PayPay、LINEヤフーとの連携、金融、法人向けDX、AI、クラウド、データセンターなど、通信以外の事業への投資を積極的に進めている。
2026年3月期の売上高は7兆387億円と過去最高を更新し、営業利益は1兆426億円、親会社帰属利益は5,508億円となった。(ソフトバンク)
さらに2027年3月期は年間配当8.8円を予定している。(ソフトバンク)
現在の株価246.9円に対して8.8円の配当であるため、配当利回りは約3.6%となる。
これはかなり魅力的である。
ソフトバンク最大の武器は「AI」
3社を比較したとき、ソフトバンクが最も特徴的なのがAIである。
NTTもIOWNやAI、データセンターなどへの投資を進めている。KDDIもAIやデータセンター、DXなどへの投資を強化している。
しかし、ソフトバンクはAIを今後の成長戦略の中心にかなり明確に位置付けている。
つまり、
「通信で安定したキャッシュフローを稼ぐ」
↓
「そのキャッシュをAI・データセンターなどの成長分野へ投資する」
↓
「通信会社からAI・デジタル企業へ進化する」
という戦略である。
これがうまくいけば、3社の中で最も大きな利益成長を実現する可能性がある。
ただし、これは同時にソフトバンク最大のリスクでもある。
AIやデータセンターへの投資には巨額の資金が必要となる。
投資したからといって必ず利益が出るとは限らない。
したがって、NTTやKDDIと比べると、ソフトバンクはやや「成長株」に近い性格を持っている。
3社の「強み」を一言で表すと?
ここまでを一言でまとめると、次のようになる。
NTT=安定性
KDDI=バランス
ソフトバンク=成長性
この違いを理解すると、3社の選び方はかなり簡単になる。
「できるだけ安全に長期保有したい」
→ NTT
「安定性も欲しいが、成長性も欲しい」
→ KDDI
「多少のリスクを取って成長性を狙いたい」
→ ソフトバンク
という考え方である。
配当で比較するとどうなのか?
通信株を買う理由として、配当を重視する人は多い。
3社とも株主還元に力を入れているが、性格は少し違う。
NTTは2027年3月期の年間配当を5.4円としており、2026年9月11日の株価175.7円に対して約3.1%の利回りとなる。(Yahoo!ファイナンス)
KDDIは84円で、3,031円に対して約2.8%。
ソフトバンクは8.8円で、246.9円に対して約3.6%である。(ソフトバンク)
したがって、単純な配当利回りだけを見るならソフトバンクが最も高い。
ただし、配当利回りだけで判断するのは危険である。
重要なのは「その配当を今後も維持・増配できるのか」という点である。
その観点では、KDDIの25期連続増配を目指す姿勢は非常に評価できる。
NTTも安定した株主還元を続けており、ソフトバンクも年間8.6円を長く維持したうえで2027年3月期は8.8円への増配を予定している。(ソフトバンク)
株価の割安感ならNTTが一歩リード
株価水準を比較すると、現時点ではNTTが最も魅力的に見える。
2026年9月11日時点で、
NTT:PER約14.6倍
KDDI:PER約15.7倍
ソフトバンク:約21倍
となっている。
もちろん、単純にPERが低ければ良いわけではない。
ソフトバンクはAIやPayPayなどの成長期待が株価に織り込まれているため、PERが高くなるのはある程度自然である。
一方、NTTはPER14倍台でありながら、通信インフラという安定した事業基盤を持っている。
そのため「今の株価が割安か」という観点ではNTTを高く評価したい。
では、成長性はどこが一番高い?
ここではソフトバンクを一番に評価したい。
ソフトバンクは通信だけでなく、PayPay、金融、法人DX、AI、データセンターなどに成長領域を広げている。
2026年3月期も売上高・営業利益・純利益が高水準となり、売上高は過去最高を更新した。(ソフトバンク)
KDDIもローソン、金融、エネルギー、DX、AIなどに事業を広げているため、成長性は高い。
NTTもNTTデータやデータセンター、IOWNなどの成長分野を持つ。
ただし、現時点で「今後の利益成長に対する期待」という点ではソフトバンクが最も大きいと考える。
リスクが最も低いのはどこか?
これはNTTである。
もちろんNTTにもリスクはある。
通信料金の競争、設備投資、国内市場の成熟、NTTデータなど海外事業のリスクなどがある。
しかし、通信インフラを中心とした巨大な顧客基盤とキャッシュフローを持っていることは大きな強みである。
KDDIもほぼ同等の安定性を持つ。
一方、ソフトバンクはAI・データセンターなどへの積極投資が成長の源泉であると同時にリスクにもなっている。
したがって、
安定性:NTT > KDDI > ソフトバンク
という評価になる。
3社を「投資目的」で選ぶなら
ここが最も重要なポイントである。
とにかく安定して配当をもらいたい
NTT
NTTは通信インフラを中心とした圧倒的な安定性が魅力である。
株価の大幅な上昇を狙うよりも、配当を受け取りながら10年、20年と保有するイメージに向いている。
現在のPER14倍台という水準も魅力的である。
安定性と成長性を両立したい
KDDI
個人的に最もバランスが良いのがKDDIである。
通信、金融、エネルギー、DX、ローソンなど、収益源が多様化している。
さらに24期連続増配を達成し、25期連続増配を目指している。
「高配当株を持ちたいけれど、成長性も欲しい」という投資家には非常に相性が良い。
成長性を最優先したい
ソフトバンク
AI、データセンター、PayPay、法人DXなどへの期待が大きい。
通信株でありながら、AI関連の成長企業としての側面も持っている。
ただし、その分だけ投資負担や事業リスクも大きい。
したがって、NTTやKDDIよりも株価変動や業績変動に注意したい銘柄である。
私ならどれを買う?
ここまで比較したうえで、2026年9月時点で私が3社から1社だけ選ぶなら、KDDIを選ぶ。
理由は「安定性」「成長性」「株主還元」の3つのバランスが最も良いからである。
NTTは割安感では非常に魅力的である。
ソフトバンクは成長性が魅力的である。
しかしKDDIは、その中間に位置している。
通信事業による安定した収益を持ちながら、金融、エネルギー、DX、ローソン、AIなどへ成長領域を広げている。
さらに連続増配という株主還元の実績も強い。
「大きく儲ける可能性」だけを狙うのではなく、「大きく負けにくいこと」も重視するのであれば、KDDIは非常に魅力的な選択肢である。
ただし、株価によって順位は変わる
ここは非常に重要である。
株式投資では「良い会社を買う」だけでは不十分である。
良い会社を、良い価格で買うことが重要である。
例えばKDDIが3,500円まで上昇すれば、現在よりも割安感は大きく低下する。
一方で、2,800円まで下落すれば、84円配当を前提とした配当利回りは約3.0%となり、かなり魅力的になる。
同じ会社でも、買う価格によって投資判断は変わるのである。
NTTについても同様である。
175円前後なら比較的割安感があるが、200円を超えてくれば現在のPER水準から見た割安感は薄れてくる。
ソフトバンクについても、246円前後ではAIやPayPayなどの成長期待がかなり株価に織り込まれている。
したがって、ソフトバンクを買うなら「株価が大きく下がったとき」を狙う戦略も有効である。
3社の買い場を考えてみる
あくまで個人的な目安であるが、現在の業績・バリュエーションを考えると、次のように考えている。
| 銘柄 | 現在株価 | 少し買いたい | 魅力的 | かなり魅力的 |
| NTT | 175.7円 | 175円前後 | 165円前後 | 155円前後 |
| KDDI | 3,031円 | 3,000円前後 | 2,900円前後 | 2,800円前後 |
| ソフトバンク | 246.9円 | 240円前後 | 230円前後 | 220円前後 |
この中で現在の株価から最も買いやすいのはNTTである。
KDDIは3,000円近辺なら少額から検討したい。
ソフトバンクは230円前後まで下がってくれば、成長性を考えるとかなり面白くなる。
結論――NTT・KDDI・ソフトバンク、どれを選ぶ?
最後に3社をまとめてみたい。
NTT
「安定性と割安感」
通信インフラとしての安定性は3社でもトップクラス。PERも低く、配当利回りも約3%ある。長期保有向きの王道ディフェンシブ株である。
KDDI
「安定性と成長性のバランス」
通信を土台に金融、エネルギー、DX、ローソン、AIなどへ事業を広げている。24期連続増配という株主還元も魅力であり、3社の中では最もバランスが良い。
ソフトバンク
「配当と成長性」
PayPayやAI、データセンターなどの成長余地が大きい。3社の中では最も成長株に近い通信株であり、うまくいけば株価上昇の余地も大きい。ただし、PERは約21倍と高めである。
したがって、私の評価は以下のようになる。
| 項目 | NTT | KDDI | ソフトバンク |
| 安定性 | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★☆ |
| 成長性 | ★★★★☆ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| 配当 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★★★ |
| 割安感 | ★★★★★ | ★★★★☆ | ★★★☆☆ |
| 長期保有 | ★★★★★ | ★★★★★ | ★★★★☆ |
| 総合評価 | 4.5/5 | 5/5 | 4.5/5 |
個人的には、**「今の株価で買うならNTT、総合力ならKDDI、成長性ならソフトバンク」**という評価である。
特にKDDIは、通信株としての安定性を持ちながら、通信以外の成長事業を育てている点が強い。
一方で、NTTは現在のPER水準を考えると「安く買って長く持つ」という投資では非常に魅力的である。
ソフトバンクはAI・データセンターへの投資が成功すれば3社の中で最も大きな成長を遂げる可能性がある。
結局のところ、「どれが一番良い会社か」ではなく、**「自分が何を重視するか」そして「いくらで買うか」**が重要なのである。
配当を受け取りながら安定的に資産を増やしたいならNTT。
安定性と成長性を両立したいならKDDI。
多少のリスクを取ってAIなどの成長を狙うならソフトバンク。
この3社は同じ通信株に見えて、実はかなり異なる投資対象なのである。
通信株への投資を考えるのであれば、3社を比較したうえで、自分の投資スタイルに最も合った銘柄を選ぶのがよいだろう。

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